今回は、旧ナショナル(松下電器)、現パナソニック社製の、1985年に発売されたマッサージチェアです。
現在、この品は、当方が出入りするある業者さんの事務所に鎮座ましましており…
まぁ、部屋にあるガラクタではない、そして、当方にさしたる情報が書き込める訳ではないのですが、今回は頭の中のガラクタ(記憶)を整理するということで、タラタラと記して参りたいと思います。
この品を手に入れたのは、発売された翌年辺り、つまり1986年だったと記憶します。
当時、未だ大学生だった当方ですが、ヒョンなことから広告関係の雑文を書く仕事を仰せ遣うことになり…
最初は、ろくに単位も取れてないのに卒業後の就職を考えてアレコレとアルバイトをしていた同期の友人に頼まれて、広告代理店が発行する、いわゆるイエローページのような広告付きの電話帳に記された電話番号および住所の確認作業、これを5000円程度のギャラで請け負ったのです。
仕事は、とにかく載せられるだけ載せられたお店や施設の電話番号に電話し、先述したように電話番号や住所など連絡先が間違っていないかどうかの確認だけという、非常に退屈な仕事でしたので、そこで、何となく、その電話帳の沢山の広告に記されている数々のコピーが気になったものですから、いちいち校正したり、「オレだったらこう書くけどなぁ」などと余計なことをして…
今はどうだか知りませんが、当時、そういった広告代理店の発行するロハ(タダ)の電話帳に載せられる広告に付けられたコピーの多くは、素人が書いていたんですね。
例えば、子育てに忙しくてフルタイムで出社できない主婦などが、パートやアルバイトで、時に在宅で行っていた。
そんな具合ですから、最低限、誤字はないものの、助詞が間違っていたりして日本語になっていないものも多く…
といっても、当方だって素人だったのですが。
ところが、書き込みで汚しつつ確認作業を終えて返した電話帳、これが担当者の目に付いて、仕事を頂くようになってしまい、コピーだけでなく、雑誌の広告ページに掲載する記事を書いたりするまでになってしまった。
時代は「コピーライター」などという横文字職業がもてはやされたバブル経済の最中、大金が行ったり来たりするにも関わらず…
イー加減な世の中だったなぁと思います。(苦笑)
そんな中で、ある家電量販店の紹介記事を書くことになり、代理店に指定された大型店舗に、取材用のノートに小型レコーダー、カメラを抱えて向かいました。
そして、店長さんにお店の特徴など聞きながら店内を歩き回ったり、売れ筋商品、または新製品などを弄らせてもらったりしたのですが…
今は余り見かけないように思いますが、つい最近まで、大型家電量販店の「憩いの場」といえば、マッサージチェアの売り場でした。
ご記憶にある方もいらっしゃると思いますが、買い物を奥さんや子供に任せた中高年男性、または時間は有り余りるほどあるのにお金と行くところがないご老人が、買う気にもないのにいつまでもダラダラとしていたものです。
当方が出向いた店舗もその例に違わなかったのですが、そんな中でポツリと、座椅子タイプだけに座ったり立ち上がったりするのに厄介ということもあってか、誰にも試されることなく片隅にあったのが、今回の品という訳です。
うたかたとはいえ好景気の世の中、ディスコに出向いてはボディコンシャスのピッチピチのワンピースを身体に纏ってはフェイクの羽をまとめた扇子をヒラヒラさせて踊り狂うお方が多くいらっしゃった一方で、雇用均等法を鑑み、遊びと恋愛を二の次としてスマートに人生をクリエイトせんと仕事を終えた後も専門学校などに行って資格取得などに励んではキャリアウーマンを目指したお方も多く出た時代、そこでこの品は、オフタイムに疲れを取りつつゆっくりと過ごしたいと考える若い女性層を狙ったオシャレ家電とのことでしたが…
機能的には、仕込まれたローラーを上下、またはローラーを回転させて指圧的な動きをさせつつ上下するのを基本として、その上下する間隔を設定できるというだけ、マッサージチェアと捉えると簡易的な品ではありますが、マッサージ機能を備えたのロッキングする座椅子と考えると、今も使われるのか否か定かではありませんが、当時、既に「カウチポテト」という言葉は行き来しており、当方も、深夜に放送されているところを録画した古いハリウッド映画(アダルトビデオではありません)なんぞを見ながら、ソフトドリンクとポテトチップス、またはポプコーンなぞを飲み食いしながら過ごしていたものですから、「こりゃイイナ」と思ったものでした。
しかし、取材に出てまで記事を作成するといっても、当方は駆け出しの身、ギャラも3万円に満たないものでしたので、定価5万6千円の品は…
「どうして松下はベージュ色なんかにしたんでしょうね」
普通は買えるだけのお金が溜まるまで我慢するものですが、欲しいとなると後先考えず買おうとしてしまい、ついでにケチをつけて値切ろうとするのは、江戸っ子と大阪モンのハーフ(?)の当方の悪い癖。
「売れてますか?」
「…いや、それが」
「何で黒にしなかったんでしょうね」
黒を基本とするモノトーンの商品が多く出回っていた時代でもありましたので、そこをいかにも業界通のフリをして畳み掛けるのですから、我ながらタチが悪い。そんな具合に、何様のつもりか、ずっと年上らしき店長さんを上から目線で質問する有様で、さぞや不愉快な思いをさせたと思いますが…
今はどうだか知りませんが、松下製品というのは余り値引きされないことで有名で、その昔、三種の神器の1つとして花形商品であったカラーテレビの二重価格を消費者団体から批判された松下幸之助をして、目を真っ赤にして「人の敷地に土足で入ってきおって」などと正体を露に怒ったという逸話もあったほど。
さりとて、電気店の店長さん、その立場上、売れない品物をいつまでも店に放っておくのは拙いということで…
「では…」
と、当方の耳元でゴニョゴニョ。
画して、世間は消費税(売上税)云々で騒がしかった当時ですが、驚くほどではないものの、また取材で得たギャラと収支すれば赤字だったとはいえ、それなりにお安く手に入れた、その後の松下電器の凋落を象徴するかのようなダサいネーミングの「ロッキンローラー」でしたが…
不思議なもので当方のほうは、店舗紹介記事が今度は電気店の本部の担当者さんの目につき、放送CMの企画に関わるようにもなってしまい、ゆっくりと映画(クドいですがアダルドビデオでは決してありません!!)も見てられなくなってしまう事態を迎えるのですから、ホント、ツクヅク、バブル経済の時代というのは、イー加減なものでした。
そして、30年近い月日を経て、ある業者さんの事務所に現存するロッキンローラーなのですが、当初は、その業者に当方と同じく出入りする60過ぎのオッサンに差し上げたのです。
部屋のガラクタ、お荷物千万とはいえ、ろくに使っておらずまだまだ使えるものを処分するのは勿体無い、それなら必要としている方に役に立てば、万物に神宿る精神を持つ日本人による日本製品も幸せだろうと。
加えて、オッサンは早期退職したとはいえ元松下社員だったとのことで、不思議な縁もあるような気がしたもので…
ところが、オッサン、そのロッキンローラーをば松下幸之助譲りの親孝行精神をもってして横に流して御父君に与えたところ、御父君が高齢もあってペースメーカーを着けねばならなくなってしまってマッサージ機などが厳禁となる事態に、そこで引き上げたものの、オッサンの自宅には置いておくスペースがなく…
何やらマッサージ機も居場所を探してウロウロ、改めてリストラされた方々が右往左往する今の時代を象徴するかのようで甚だ複雑な思いもさせられます。
現在、ロッキンローラーは、バツイチの巨乳好きでヘルニア持ち、何かというと力ずくで仕事を片付けようとするクロマニヨン人さながらの人物を日々、癒している様子で、ま、それなりに充分に役に立っているようではありますが…
果て、疲れた若い女性向きに作ったものが、胸の大きな若い女性好きに愛用されることになろうとは、開発者も想像だにしていなかったろうと思います。
因みに、ロッキンローラーは、現パナソニックの滋賀彦根工場にあるウェルネス事業部の、歴代のマッサージ機を陳列するスペースにも置いてあるそうです。
そのスペースの名は、「モミモミ歴品館」。
…モミモミ、ねぇ。
胸の大きな若い女性好きに愛用されることになるのも仕方ないような気がするのは当方だけでしょうか。




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